車載用ECUとは

車両を構成する部品の中で、ヘッドライトやカーステレオ、エアコンなどの電気機器類にくらべ、走る・曲がる・止まるといったクルマ本来の機能には、極めてメカニカル(機械的)な機構・原理が採用されていました。電子制御技術の進化に伴い、エンジンをはじめとする様々な機能・装置において、電子制御によるクルマの性能向上が図られるようになっていきました。
エアバッグ、ATやCVTなどのトランスミッション、車線維持システム、車間距離制御システムなど、実に様々な分野に及びます。それらの電子制御するコンピューターがECU(Electronic Control Unit)なのです。ハイブリッド車やEV(電気自動車)、燃料電池車といった環境対応車も、ECUなしでは実現し得ません。今や多いクルマでは100個超のECUが搭載され、各自動車メーカーが誇る様々な先進技術の頭脳役を担うに至っています。

富士通テンのECUビジネスの歴史

富士通テンとしては、1973年に排出ガス制御用電子機器の生産を始めたのが、この分野のスタートでした。1981年にはトランスミッションECU、1983年からはエンジン制御ECUの生産を開始。以後、電動式パワーステアリング用、エアバッグ用、ハイブリッド車向けなど各種ECUの開発・生産を手がけ、これまでに累計1億台以上の制御系ECUを出荷しています。

Interview開発者インタビュー

最高峰の環境対応車の
ハイブリッド機能を司る
制御ECU

AE技術本部
パワートレイン技術部
次世代環境グループ第一技術チーム
チームリーダー

西尾 和也

2つの動力源の
間を取り持つ仲介役

~ハイブリッド制御ECUの役割~

一般に言う「ハイブリッド車」とは、エンジンとモーターという2つの動力源を搭載することで、双方の強みを活かした高効率(省燃費)かつハイパワーな走行を可能にしています。加速性能場面では、一般にモーターは低速域で、エンジンは高速域において強みを発揮します。その時点での車速や求める加速力、バッテリーにどの程度蓄電されているかといった諸条件を考慮して、その時々で最適な配分でエンジンとモーターの両者が分担・協調し合う。またバッテリーの状況を常にモニタリングし、残量が減っている時にはエンジン出力の一部を動力用ではなくバッテリーの充電用に割く――。このような形でハイブリッドシステムの運用を司るのが、ハイブリッド制御ECUの役割です。

ECU全体として見ると、実に多くの種類があり、そのサプライヤー企業も数多く存在します。ただ自前で開発したハイブリッドシステムを搭載する完成車メーカーが、世界中で数えるほどしかないことからもわかるように、ハイブリッド制御ECUを開発できる企業も世界でわずか数社に限られます。その内の1社である富士通テンにおいて、その開発に携わっていることに、誇りと責任を感じています。

企画、開発~評価まで
一気通貫でできる醍醐味

~全てに優先する信頼性~

一般にハイブリッド制御ECUの開発では企画、開発~評価といったステップを踏みながら、完成車メーカーにおける新モデル開発と連動・並行して進めていきます。そのため、新たなECUを一から開発するには新車と同じくらい……概ね4年くらいの期間を要します。私自身のプレイヤーとしての専門はハードウェア、つまり基板の回路設計ですが、今はプロジェクトリーダーとして、担当する製品の開発全体をマネジメントする立場にあります。

富士通テンでは、若い担当者であっても細分化された業務の一部のみに携わるのではなく、自身が参画するプロジェクトについて、一気通貫で全体に携わることができます。当社の開発活動および組織運営の特徴と言えるでしょう。企業としての開発力強化に寄与しているのと同時に、社員自身にとってもやり甲斐につながっているように思います。

他のものづくり同様、ECU開発においても品質の大切さは言うまでもありません。中でも最も重要なことは信頼性です。エンジンやモーターに指示を出す司令塔の役割を果たすハイブリッド制御ECUが壊れては、まともにクルマは動きません。開発のスピードや効率をいかに高めていくかも重要なテーマです。ただ、信頼性を犠牲にして効率を高めるといったアプローチは決して採りません。あくまでも品質を確保するという前提の下で、「もっと短期間で実現する方法があったのではないか」「なぜこんなやり直しが起きてしまったのか」など、知恵を出し合いながら、創意工夫を重ねます。

そんな風に一切の妥協を許さぬ姿勢で取り組んでいても、「だから一安心」「不具合などあるはずがない」という気にはなかなかならないものです。そうしたプレッシャーも感じつつ、それだけ社会的な責任・影響の大きな意義深い仕事を任されているのだ――そう前向きに捉えています。

高温・振動・水没
過酷な環境でECUを苛め抜く

~ 妥協なき試験の現場 ~

どのようにして条件の厳しいクルマ搭載時の“車載品質”を満たしていくか。企画や回路設計、ソフトウェア開発の巧拙もさることながら、評価ステップで行う試験こそが、まさに車載品質を握る鍵と言えるでしょう。

必要な試験は大きな括りで分けても50種類以上に及びます。それぞれについて細分化された実施条件が定められており、総数で言えば数え切れないほどの回数をこなすことになります。
そのため50種類全て、つまり1サイクルが完了するまでに半年以上を要します。そこで見つかった問題について解消・解決した上で、さらに2巡目の試験を実施します。一般的な試験項目については2~3サイクル、対策が難しい試験については5~6回とやり直しながら改善を図っていきます。
50種類におよぶ試験は大きくノイズ試験(電気特性試験)と信頼性試験とに2分されます。

ノイズ試験では、「我々が開発しているECUが発するノイズが他の電子機器に影響を与えないか」「外からのノイズによってECUが動作を制限されないか」、この両方の観点から確認を行います。
普段の生活で意識することはほとんどありませんが、我々の周りは、携帯電話、テレビ、ラジオ、緊急車両の無線など、様々な種類のノイズで溢れています。同じ製品・機器であっても、使用されている周波数帯が国によって異なるため、400種類を超える周波数で試験を実施する必要があるのです。
目に見えない電波との戦いは容易ではありません。結局のところ設計において、マイコンをはじめとした各パーツをいかに配置し、どのような回路を構成するかが鍵となります。この部分はまさにノウハウの結晶と言えるでしょう。

もう一方の信頼性試験は、その名の通りECUにどれだけの信頼性があるかを証明するものです。クルマが使用される環境は決して一様ではありません。過酷な環境下においても使用に耐え得るものでなくてはなりません。
超寒冷地と高温地帯、双方での使用を想定し、数ヶ月にわたって-30℃から+100℃までの温度変化ストレスにさらす。数百万回という単位で振動を与え続ける。2ヶ月以上に亘って高温状態で動かし続ける・・・このような試験を実施します。あるECUの開発では、カーメーカーから「水没しても特定の機能についてはなんとか維持したい」との要望が寄せられ、海水の塩分濃度まで考慮して水没試験を繰り返しました。
こんな風にECUをいじめ抜いて、それでも正常な機能・動作が保たれるか確認し、必要なら対策を講じるこうしたサイクルを回していくことで、ようやく確かな品質を有するECUだと胸を張ることができるのです。

若くても第一線で
活躍できる場と風土

~ 入社してすぐに自動車メーカーへ駐在 ~

私自身についても少しお話ししたいと思います。
大学では電気電子工学科に在籍しました。研究室で取り組んだのは、アモルファスという結晶構造を組成しない特殊な金属を生成して物性を調べるといったテーマで、現在の仕事とは全くといって良いほど縁遠いものでした。
就職活動を始めるに際し、クルマが好きだったので、それに関連する仕事に就きたいと考え、カーナビゲーションやカーステレオを手がける富士通テンを志望。縁あって入社することになりました。2001年春のことです。

入社した時点では、ECUについては全くといって良いほど知りませんでした。
新入社員研修の期間に、各部門がどのような製品を開発・生産し、どういった事業活動を行っているか、説明・オリエンテーションを受ける機会がありました。その場で、ECUはクルマの各機能において頭脳としての役割を果たし、その開発業務はクルマ全体の性能向上に深く関われる仕事であることを知り、配属の段階でECUを手がける事業部を希望しました。

入社後間もなく、先輩社員数名とともにトヨタ自動車に駐在し、ハイブリッド車向けのECU開発に携わることになりました。ここで車両開発現場の熱気やスピード感、品質意識といったものを徹底的に叩き込まれました。若い時期にこうした経験が積めたのは、自分にとって大きな財産になっていると思います。富士通テンには若い時分から第一線で活躍できる場と風土があると思います。

専門外の知見を
養うことで更なる高みに

~ 開発者・技術者としての研鑽 ~

2016年からは、環境対応車向けの複数のECU開発プロジェクトを統括する「プロジェクトリーダー」という立場にありますが、技術者・開発者として、まだまだ成長していきたいと考えています。
そのために自分はどのような研鑽に励むべきか――。当然のことですが、社会や市場がどのようなクルマを求めその結果としてクルマがどのようなECUを求めるかが決まるわけです。付加価値や競争力を備えたECUを開発するには、ECUの枠から外れた分野についての知識や見識が不可欠だと思います。

欧州には、環境重視の観点からドイツやオランダのように、期限を区切って内燃機関(エンジン)と決別することを、国家意思として明確に示している国もあります。これは一例に過ぎませんが、それぞれの国や地域における政治状況や法規制の動向、社会的背景を知ることなく、今後どのようなECUが求められるようになるかを把握できるはずもありません。
よりコンパクトなサイズで、求められる機能を搭載し、いかに信頼性を高めていくか……こうした洗練された基盤づくりを追求する一方で、少し目線を上げ視野を広げ、中長期の観点から物事を捉えることが、未来に必要なECU開発がいかなるものかを知る上で、重要な手がかりになるのではないでしょうか。

リビングにいる感覚で
いつの間にか目的地に

~ クルマとECUの未来 ~

クルマが誕生して百年以上。その歴史のほとんどは内燃機関を動力源とする車両によって紡がれてきました。動力源の大きな変革期にある今日、クルマの頭脳ともいえるECUの開発に携われることは、本当に幸運だと思います。
動力源に限らず、今後のクルマはどういう方向に進化し、その中でECUはどんな役割を果たすのか――むろんこれについて断定的なことは言えませんが、自分なりにこんな風かなと思うところはあります。
「運転を楽しむ」というニーズは今後も残り、それを追求する分野も進化していくでしょうが、一方で近年は「モノからコト」と言われます。

単に移動するモノではなく、移動する時間をいかに快適で楽しいものにするか、という観点からも自動車開発が進められるのではないでしょうか。「リビングにいるような感覚でいつの間にか目的地に着いている」とか……あくまでも私個人としての主観ですがこうした次世代車においても、様々な機能の司令塔役を担うECUが果たす役割は極めて大きいと思います。次代のクルマにどういったECUが求められるのかを見極め、その実現に必要な技術・ノウハウの蓄積や人材育成を通じて、社会と当社に貢献していく。それが私の役割だと考えています。

AE技術本部
パワートレイン技術部
次世代環境グループ第一技術チーム
チームリーダー

西尾 和也

Kazuya Nishio

1978年生まれ。岐阜県恵那市出身。2001年4月、富士通テン(株)に入社。入社して間もなく、先輩社員数名とともに4年にわたりトヨタ自動車に駐在し、ハイブリッドECUの開発を経験。
2005年以降、自社製のハイブリッド車向けの制御ECUの設計を担当。その後、2010年からはアイドリングストップ車用、2012年からはハイブリッド車用の制御ECUの開発において、プロジェクトリーダーを努める。
2016年より、ハイブリッド車のみならず、その他電動自動車向け制御ECU開発全体をマネジメントする統括リーダーとして、富士通テンの先進ECU開発を牽引する。

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