「車載品質」というDNA。

富士通テン ドライブレコーダー開発物語

ドライブレコーダー開発
糠野 友彦、鶴田 典男、川西 弘晃
  • ITS技術本部
    製品企画室
    第一企画チーム
    糠野 友彦Tomohiko Nukano
  • ITS技術本部 製品企画室
    第一企画チーム
    チームリーダー
    鶴田 典男Norio Tsuruta
  • ITS技術本部
    プラットフォーム技術部
    第一技術チーム
    川西 弘晃Hiroaki Kawanishi

1確実な記録への挑戦!

ドライブレコーダーの
「車載品質」。

鶴田 典男

ITS技術本部 製品企画室
第一企画チーム チームリーダー 鶴田 典男

製品企画とプロジェクトマネジメントを担当。お客様からの要求をもとに企画提案を行うとともに、各部門での開発の進捗やスケジュール管理を担う。

安全安心に関する気運が高まるなか、ドライブレコーダーは車内に装着したカメラで万が一の事故の際の瞬間映像を記録し、目撃者としての役割が期待できるとして、近年注目度が高まっています。製品の性格上、たとえ大きな衝撃を受けても「壊れることなく、その瞬間をしっかり記録データとして残せる」という当たり前のことがとても大切です。しかし、車の中というのは「温度変化」「振動耐久」、さらに「視界を妨げない取付・製品の大きさ」など「車ならではの要件への適合」が求められます。

そんななかで、我々は『車のことをよくわかったモノ作りをしよう!』という想いのもと、本製品の開発に着手しました。その『車のことをよくわかったモノ作り』こそが富士通テンのあらゆる製品作りにおいて、一切妥協を許さないポイントであり、「車載品質」と呼んでいます。この製品の開発も車ならではの過酷な環境にも耐えうる「車載品質」というクオリティへの挑戦でもありました。

2衝突しても壊れない耐久性を確保せよ!

振動/衝撃/落下試験を繰り返し検証し、
実現した「耐久性」。

糠野 友彦

ITS技術本部 製品企画室
第一企画チーム 糠野 友彦

開発全体の取りまとめ役。どのような製品を提供することがベストなのかを検討し、実際に製品化していく役割。

我々のドライブレコーダーを搭載した日本自動車研究所(JARI)での衝突試験では、時速55kmの前面衝突でもカメラが外れることなく、記録映像を確認できました。実は、この試験の前から結果には自信がありました。その理由はそれまでの開発で品質を追求してきた自負があったからです。

当社はカーナビのほか、車間距離を測るミリ波レーダーや、エンジンやエアバッグ等を制御する製品などを手掛けており幅広く車に関わっています。その為、車に対する幅広い知見と試験設備が充実しています。例えば事故時の衝撃にも耐え、しっかり記録できるような耐久性の実証には、エアバック制御のノウハウが活きています。エアバッグ制御の開発では、事故時にどの程度の衝撃が車室内に発生しているかを詳細なデータとして把握する必要があるのです。また、衝撃/落下試験など検証試験をする設備もあり、これらをドライブレコーダーの開発でも活用し、「製品が壊れていないか?」「映像はしっかり記録できているか?」事故時の衝撃だけでなく、車両のさまざまな振動や手で引っ張るなどの評価を行い、取付を維持できるか?究極ともいえる状態での耐久性の検証を何度も繰り返し行い、確実な映像記録を追求し続けました。

3日本特有の気候との戦い!

日本特有の気候を考慮した車室内の激しい
“気温の変化”や“高湿度”との戦い。

川西 弘晃

ITS技術本部 プラットフォーム技術部
第一技術チーム 川西 弘晃

企画から出てきた仕様書をもとに、おもにハード設計、回路・基盤設計など実際のモノづくりを担当し、製品化していく役割。

車室内の気温変化は非常に激しく、ドライブレコーダーを取り付けるフロントガラス部分は、冬場は凍結し‐10℃を下回ることもあり、逆に夏の炎天下では80℃近くにまで達するといわれています。当社の現在の商品は、‐20℃~+65℃までの動作を保障しており、これは数あるドライブレコーダーの中でも非常に広い保証範囲です。しかし、屋外に駐車された車の温度変化を考慮した場合、夏と冬の車室内温度の想定値を上回る耐久性がなければ、いざ使う前に製品が動作しない、ということにもなりかねません。そういったリスクも考慮し、さらに想定値を上回る‐30℃~+85℃でもデータが保存できるよう、厳しい「高温低温環境試験」を繰り返し実施し、温度への耐久性を高める工夫を施しました。

また湿度対策も重要でした。湿度が高い夏はもちろん、冬も結露によりショートが発生しないよう、部品配置を考慮するなど細部にまでこだわって基板設計を行いました。そして、高湿状態での動作試験を繰り返し行い、妥協を許さずに厳しい品質基準をクリアする製品を追求しつづけました。

ここまでする必要があるのか?過剰品質ではないのか?と思われるかもしれません。
しかし、車載品質の確保は譲れません。この点が数多くの自動車メーカーへの採用実績に表れていると自負しています。

4画質を向上せよ!ノイズを低減せよ!

困難を極めた“映像画質向上”と“放射ノイズ低減”の
両立を守り抜いたエンジニアとしての矜持。

開発過程

実は、今回の開発過程でもっとも苦労したのは、映像画質向上とノイズの低減の両立でした。当社のドライブレコーダーは、カメラ・本体一体タイプとセパレートタイプを用意していますが、ドライブレコーダーは、ルームミラーの背面に取り付ける本体一体タイプが一般的です。そのため、ドライバーの視界を妨げないよう、できる限りコンパクトであることが望ましく、さらにスッキリと取り付けるには、カメラだけルームミラーの背面に取り付けるカメラ・本体セパレートタイプが理想です。しかし、この形を採用しているメーカーは少ないのです。なぜなら、それは技術的に非常に難しい放射ノイズという課題があるからです。放射ノイズはカメラで撮影した映像をドライブレコーダー本体に伝送する際に発生します。これにより、ETCやカーナビ(特に地デジ再生)などの機器に影響を及ぼすことがあるのであるのです。

今回の製品はよりクリアな画質で映像を記録するためにイメージセンサーを大型化するなど高解画質化対応していました。しかし、高解像度の映像になればより一層伝送の際に放射ノイズは大きくなります。デジタル映像方式では、一般的に送信する信号の振幅レベルを小さくし、差動方式を採用することで、伝送経路の放射ノイズをおさえています。しかし、このような一般的な伝送方式では芯線数が多くなり、必然的にケーブルが太くなり、見栄えや取り付け性が悪くなります。そのため、ケーブルは細くかつ、放射ノイズをおさえる工夫が必要でした。

もちろん、この事実は開発企画段階から想定していました。しかし、実現できるかどうかということまでは、わかっておらず、とにかくやってみよう!という意気込みでスタートしました。

ドライブレコーダー

しかし、試作段階でその課題の大きさを実感することになりました。事実、いちばん最初に試作機をあげた時には、ノイズの影響でカーナビのTV映像が全く映らなくなってしまった。我々が想定していた以上のノイズが出ており、思うように抑えられていなかったのです。これにはさすがにスタッフ全員が焦りました。「本当に高画質化とノイズ低減の両立というプロジェクトを推進していくのか?」「計画を見直すべきではないか?」「画素数を減らすことでデータ量を減らし、ノイズを減らそう」といったネガティブな案がでるほど追いつめられていました。

部門を超えたプロジェクトとして様々な部門と議論する中で、「それはありえないだろう!妥協せず、すべての条件を両立されるためにはどうするかだ!」のようなポジティブな意見も出て、各部門の協力と知見を得ながら、何度も改良を重ね、何度も試作を作っては改善し、原因を追究するということを繰り返しました。そうした検証結果をしっかり付き合わせながら一歩一歩やっていくしかなかった。地味ではありましたが、非常にやりがいはある仕事でした。

5200種類以上の評価パターンを実施せよ!

理想の数値が出るまで六甲山で
繰り返し行われた評価・走行実験。

評価・走行実験
評価・走行実験

「実車評価」といって実際に車に取り付けた状態で車内の他の機器に影響を与えないか検証する実験は数十項目にのぼります。さらに「画質評価」については走行パターンとして組み合わせると200以上の評価実験になります。

データ伝送が完璧にできるようになったら、次は画質ということで、ノイズをいかに減らし、かつ決められた録画時間を確保していくか?ということに取り組みました。しかしそれにはカメラの生データを圧縮する方法に工夫が必要でした。そこで、我々が実走評価に選んだのが六甲山でした。六甲山は山道なのでフレームごとの変化量が非常に大きく、そうした場面でどのような映像ノイズが出るかを検証するのに最適だったのです。

画質にこだわり、一日に何十回も往復し、評価を繰り返しました。「雨が降っている場面ではどうか?」「夜だとどうなるか?」とにかくいろんなシチュエーションでの検証が必要でした。さらに言えば、「圧縮パラメーター」などさまざまな種類のパラメーターがあり、60から70パターンくらいあるのですが、それをシチュエーションごとに検証したので、結果的に相当な回数になったと思います。我々のような製品企画の人間がなぜ、評価の場面にも立ち会い、さらにはわざわざ自分たちで車を走らせるのか?と思われるかもしれませんが、それは、「最初に企画したとおりに製品ができているかどうかを企画した人間自身が検証する」というフィロソフィーがあるからです。

ここまで徹底するメーカーは珍しいのかもしれません。しかし、我々には「車載品質を確保する」という使命があります。全てはこれに帰結します。さまざまな方法を試みながら、伝送方式を検討し、また六甲山での度重なる走行実験などを経て、取付性と高画質化を両立し、カメラ・本体セパレートタイプのドライブレコーダーでは業界初となるメガピクセル対応に成功しました。この開発は振り返ってみても、ほんとうに苦しかったですが、山場であったと同時に、最後まで妥協せずやりきれたときの達成感や喜びもひとしおでした。

6富士通テンのエンジニアDNA。

安全を最優先した開発。
これが大切にしている富士通テンのDNAである。

ドライブレコーダー

今回開発したドライブレコーダーは、数多くの自動車メーカーに採用いただいており、評価の高さを実感しています。ただ、将来的にさらなる小型化といった課題もあり、すでに次なる改良に向けた動きも始まっています。今回のプロジェクトはあくまで通過点であり、次への第一歩です。

2005年に、はじめてタクシー会社向けに業務用ドライブレコーダーを発売して以来、我々は「車載品質」の確保、これを富士通テンのDNAとしてずっと大切にしてきています。これは今後も変わることはないでしょう。それをしっかり守り続け、安全を意識した開発を行ってきたからこそ、早い時期からリーディングカンパニーとして認知されてきたのだと思います。そこは企業としてももちろんですが、我々ひとり一人のエンジニアが忘れてはならない指針ではないかと考えています。

「車載品質」に基づいた製品設計

富士通テンのドライブレコーダー

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